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電車にある優先席なんてシステムは日本独自のものと聞く。真偽は知らないが、あるんだから最低限、その存在意義ってのは発揮してもらいたいと思う。
他に空いている席が無かったので優先席に座った。普段ならば避ける席だが、選択肢が無いのだからしょうがない。夏バテで体力消耗も激しい季節、譲るべき人が現れるまでは休息させてもらおうと思った。
席に座ってすぐに自分の携帯電話の電源を落とした。ほどなくして駅を数駅経過すると混雑し始め、車内は立っている人も増えた。優先席は働き盛りと思われる男女で埋められた。
そこから、不可思議を感じた。
自分は三人席の右端に座ったが、隣の男性、さらに向こうの女性、目の前の立っている男性客2人、扉の前に立つ女性、その隣の男性と6人のお客さんに囲まれた。
自分以外のお客が全て形ケータイの画面を開き、消す気配が無い。車内放送も、目の前に大きく書かれた車内マナーも無視。毎日乗っているであろうその車内に、そのシステムがあることを知らないとは信じがたい。
1駅、2駅、3駅、……区切りをつけて誰か電源を落とすかと順番に客を観察するが気配は変わらない。それどころか、入り口付近の客は乗降で顔ぶれが変わっているのに、やっぱりケータイに夢中なのである。
この人たちは日本語が分からないのか? そう思ったが、どうやら打っているメールは日本語らしい。
自分が思うような「席を譲るべき人」と言う発想と同じで、「電源を切るべき人」が乗ってこない限り、OFFにしないつもりなのだろうか。しかし、そういう人を見分ける方法はあるだろうか。人は見かけによらない。
万が一、自分がペースメーカーをつけている人間だったとしたら、優先席を目指して乗車するだろう。しかし、この光景だった場合、自分は
大きな声で宣言しなければならないだろう。
「私はペースメーカーをしています。ケータイをOFFにしていただけますか?」
なんだ、それ。優先席の意味あるだろうか。
わざわざ自分の弱点を宣言させるような心労をかけてまで安全なスペースを確保できないなら、それは“優先”なんてされていない。
いっそ、胸を押さえて苦しがってやろうかと悪戯心がわく。しかし、悪戯したところで利益は無いし、こんなバカどものために自分が通報でもされたらたまらない。
降りる駅になったら大きな声で言うのもいいかもしれない。
「私はペースメーカー使用者なので、怖くして仕方がありませんでした!」
でも、それも何かバカらしい。
ああ、こんな奴ら全員ペースメーカーを体験させてその恐怖、痛みを味合わせてやればいいのに。
約30分の乗車で目的駅に着いた。
呪いの言葉を心で吐きながら、降りた。そして、ホームで自分の携帯電話の電源を入れた。
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