今、見ておきたい映画『ミュンヘン』
2006-03-20


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S・スピルバーグ最新作『ミュンヘン』を観てきました。
朝昼がナルニアで、午後から2回だけの劇場に滑り込もうとしたら予告編が無く本編が削れていることが発覚。その回は見送って3時間の待ち。相変わらず時間津使い方が下手な自分。

スピルバーグ監督は好きな方ですが近年は熱心なファンとは言えず、劇場で見るのも欠かしてしまっている不届き者。しかし今回はどうしても劇場で見たい欲求がふつふつと湧いていました。
評判を聞いていたのもありますが、一番の起爆剤となったのがネタばらしをしていた番組のおかげ。ラストシーンに何が映っているかを聞いて是非見たくなりました。

結果、劇場へ足を運んで良かったと思える迫力のある作品でした。
ミュンヘンオリンピック開催中にパレスチナゲリラ「ブラック・セプテンバー(黒い九月)」がイスラエルの選手村を襲撃。人質になった選手11人が全て亡くなるという惨事を発端に展開される物語です。
被害者となったイスラエルは犯人グループに報復をするために極秘の暗殺チームを発足させ一人、また一人と班員を抹殺していきます。

メンバーに選ばれた人材はそれぞれの得意分野はあるものの等身大で人間くささをどこか伝えるキャラクターたち。主人公はチームのまとめ役で親は英雄だったが本人はごく普通の人。ちょうど子供が生まれ生活が変わっていく中で引き受けた任務と家庭でのコントラストが強烈なインパクトとなって旨に迫ります。
任務を描くシーンは彩度の落ちた色調がどんどん普通の生活との逸脱を感じさせ変化していく。スパイ映画のように秘密の任務を遂行する展開はエンターテイメントとしてハラハラさせられる魅力も備えていますが、内容は殺人。
政府の会計係が殺人にかかった費用は必ず領収書を取るように支持するブラックユーモアにニヤリとさせられた自分もストーリーが進むにつれ、その重さに息が詰まるような臨場感と心理描写の数々。普通の人が踏み込んだ闇の世界は決して絵空事ではなく現実にありうる、そしてこの映画の場合は事実を元にしていると思うとやりきれないものがあります。

※以下ネタバレ
はてさて、この映画を見てよかったと思う反面、数日たっても映画のムードに引きずられて重い気分になってもいます。
ラジオでバラされたシーンはNYマンハッタン島に妻と共に移り任務から離れようとする主人公と政府の上司との対話シーン。次の任務を支持されるもかたくなに断る主人公の背後に9.11で崩れ去ったツインタワーが静かにそびえているショット。報復が生み出すものの悲劇を伝える映像を思い描き、今こそ見ておきたい映画だと思わされました。
しかしラストを知っていてもそれ以上に驚かされる演出、展開には圧倒され、特に殺人とセックスが交錯する映像には”生を作る行為””生を葬る”モンタージュには魂をえぐられる想い。
ラストのやり取り含め、力強さを感じる作品。尾をひいてます。
[エンタメ雑感記]

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