パンと魚と「共産主義」
2006-01-18


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『ニュー・シネマ・パラダイス』はノスタルジックな名作として、公開当時の現代性について評価されることが殆どありません。
新作映画として公開される映画である以上、その時々に要求されるものがあるのが創作物です。『ニュー・シネマ・パラダイス』とて例外ではありません。

作中における「共産主義」への描写は戦後の時代背景という装飾という機能だけで登場するのではありません。
欧州における共産主義体制崩壊のシンボルであるベルリンの壁が崩壊したのは、1989年11月9日。ちょうどこの映画が公開された年です。

共産主義(きょうさんしゅぎ)は、私的所有から社会的所有にすることによって、貧富差のない平等な社会の成立を目指す社会理論および政治運動、イデオロギーを意味する。英語の communism はラテン語の communis(共有)が語源である。
(※wikipediaより)

「共産主義」の理念自体は民衆で食べ物を分ける「パンと魚の奇跡」に通じるものがあります。
映画の中では共産主義に未来があると見出し村を出て行ったペッピーノ一家。その後、ペッピーノ一家がどうなったのか描かれることはありません。
かつて”夢”として存在を許されていた共産主義。
それが死に絶える時代、「パンと魚の奇跡はありえないよ」と言わせる映画は、やはりこの時代だからこそ存在した”今”を描いていたのです。

※画像は「スターリンに仕事をもらえ」の台詞からスターリンのフィギュア。
チャーチル、スターリン、ルーズベルト(ヤルタ会談)「セレブの肖像」by F-toysより
[ニュー・シネマ・パラダイス道]

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